2020年度 日本ロシア文学会大賞選考結果
2020年度の日本ロシア文学会大賞の受賞者が決まりました。
受賞者
中澤 敦夫 氏(富山大学名誉教授) |
受賞のことば |
授賞理由 大賞候補者として推挙された中澤敦夫氏は富山大学名誉教授。上智大学外国語学部ロシア語学科から早稲田大学大学院文学研究科修士課程、一橋大学大学院社会学研究科後期博士課程に進まれ研鑽を積まれた。その間、1989 年9 月、第1期ソ連政府奨学生としてレニングラード大学文学部への留学を果たし(1990 年7月まで)、その後、新潟大学、富山大学にて研究と教育に邁進された。
中澤氏は多岐にわたる中世ロシア研究、すなわち、『長司祭アヴァクーム自伝』研究に始まり、瘋癲行者研究、年代記研究、世俗文学研究、イコン研究など、さまざまな主題に関する中世ロシアの研究論文、学会報告を発表されている。リハチョフ賞受賞(2017 年)に象徴されるように、その研究はロシアでも高く評価されている。また、中澤氏の古儀式派研究は、単なる蘊蓄の深さを越えてその着眼点や分析の鋭さも高く評価するに値する。ロシアからの研究者を招聘しての古儀式派研究会の活動にも精力的に取り組み、国際協力・国際交流の観点からの貢献も大きい。
上のような中世文献学の分野での大きな専門的な研究成果のみならず、中澤氏は、ストルガツキイ兄弟のSF 作品の翻訳や『ロシア詩鑑賞ハンドブック』(いずれも群像社から刊行)を始めとする解説書等の執筆など、普及・教育に関する多彩な活動によってもロシア文学研究や知識の普及に大きく貢献してきた。
以上のことから、中澤敦夫氏が日本ロシア文学会大賞候補者として真にふさわしく、また、この今回の授賞が、我が国の中世ロシア研究の水準の高さを内外に知らしめる好機となることにも間違いがない。
日本ロシア文学会大賞選考委員長 服部文昭 |