国際チェーホフ学会レポート

内田健介(千葉大学)


プーシキンスキードーム(文学アカデミー)
プーシキンスキードーム(文学アカデミー)


 2008年10月6日から8日にかけて、ペテルブルグのプーシキンスキードームにて「国際学会〈現代におけるチェーホフとチェーホフのロシア:チェーホフ生誕150年にむけて〉(Международная научная конференция "Образ Чехова и чеховской России в современном мире": К 150-летию со дня рождения А.П.Чехова)」が開催された。

 ロシア人文大学に留学中でモスクワに滞在していた私は、この国際交流委員会のホームページの告知で学会開催の情報を知り、ここ数年取り組んでいたチェーホフの家族像について報告を行った(今回の学会はラジオロシアを通じてロシア全土で聞くことが出来た)。



開会の辞を述べるセルゲイ・キバリニク氏
開会の辞を述べるセルゲイ・キバリニク氏


 3日間に及ぶ学会では50以上の報告がなされ、その報告内容もチェーホフと同時代の作家との関係を論じたものや、現代の作家との関係を論じたもの、作品分析、新たに発見された資料に関する発表などがなされ、非常に幅広い範囲でチェーホフ研究が行われていることが肌で感じ取ることができる学会であった。ただし、参加者のほぼ半分がペテルブルグ近辺(ペテルブルグ大学や文学アカデミー)からの参加であり、モスクワ大学などロシア人研究者を含めると全体の9割を占めていたということもあって、国際学会とは銘打っているもののロシアの研究報告会という感じも受けた(こうしたロシアの学会の傾向は毛利氏や沼野氏のレポートでも指摘されている)。学会は午前と午後の2部構成で行われていたが、昼食の際に今回の学会の代表を務めているセルゲイ・キバリニク氏が、私を東からの代表でアメリカ・ブラウン大学のミハル・オクロット氏を西からの代表だと言って笑っていたが、ウクライナから参加した2人を除けば、海外から参加した報告者は私とアメリカから2名、合計3名のみであった。

 報告会場にはプーシキンスキードームの大会場が用いられ、普段は付属博物館に展示されているチェーホフに関する資料が会場に集められ、学会に聴講で訪れた人々が自由に閲覧することが可能になっていた。学会が終わると1日目はペテルブルグの若手俳優(ファンタンカ劇場)による『かもめ』の実演が行われ、2日目にはアレクサンドリンスキー劇場への招待がなされた。他にも宿泊先や昼食などの手配が行き届いており、学会に参加する者に対して非常に環境が整えられていた。

 学会が行われていた3日間は、50近い報告を一つの会場で重複なく行ったため、まさにチェーホフ漬けの日々を送ることができた(それと同時に今一度自分のロシア語能力を思い知らされる場でもあった)。プログラムが手元に届いたのが一週間前で発表の持ち時間が20分だと分かったのがギリギリだったために、自分の報告の準備に追われて他の報告に対する準備ができなかったのが悔やまれるが、ロシアを代表するチェーホフ研究者の報告を聞くことができ、また研究についての話をすることができたのは非常に幸運であった。



左からイゴーリ・スヒフ、アンドレイ・ステパーノフ、スベトラーナ・エヴドキモワ
左からイゴーリ・スヒフ、アンドレイ・ステパーノフ、スベトラーナ・エヴドキモワ


 なお、キバルニク氏によれば、文学アカデミーでは来年度の2009年においてゴーゴリ生誕200周年を記念した学会を予定しているとのことである。関心のある方は是非来年度のプーシキンスキードームのホームページ(http://www.pushkinskijdom.ru/)、およびRuthenia(http://www.ruthenia.ru/)などをチェックしていただきたい。



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