日本ロシア文学会国際交流委員会企画

講演会の記録



講師 V・G・コストマーロフ(Виталий Григорьевич Костомаров)博士
テーマ ロシア語の現状と発展の傾向 <<Современное состояние и тенденции развития русского языка>>
日時 2004年11月25日(木)午後3時〜4時40分
場所 東京大学文学部3号館7階スラヴ文学演習室



歓迎の辞・コメント:佐藤純一(東大名誉教授,元日本ロシア文学会会長,創価大教授)
日本ロシア文学会国際交流委員会・東京大学文学部スラヴ文学研究室 共催
(講義・質疑応答はロシア語、通訳なし)



 ヴィタリー・グリゴリエヴィチ・コストマーロフ博士(1930年生まれ)は、ロシア教育アカデミー会員、ロシア語ロシア文学教師国際教師連盟(マプリャル)書記局長、元プーシキン大学学長。現代ロシアを代表するロシア語研究者の一人で、特に文体論、言語文化、社会言語学、言語地域研究などの分野で多大な業績をあげ、多くの著作を通して日本のロシア語研究者・ロシア語教師にもよく知られています。

 今回は、ロシア連邦外務省付属国際文化科学協力センターが日本ユーラシア協会と共同で開催する「ロシア語週間2004」のために来日されることになり、在日ロシア大使館文化担当レオニード・ガムザ氏のご配慮によりこの機会に講演をしていただけることになりました。

 当日は元日本ロシア文学会会長で、コストマーロフ博士の業績に詳しい佐藤純一・創価大学教授に歓迎の挨拶をしていただき、また講演に先立って、佐藤教授からコストマーロフ博士に、日本ロシア文学会編『日本人とロシア語』(ナウカ、2000年)が記念に贈呈されました。


写真:『日本人とロシア語』をコストマーロフ博士に贈呈する佐藤純一教授

『日本人とロシア語』をコストマーロフ博士に贈呈する佐藤純一教授


 この行事について小林潔氏に書いていただいた聴講記を以下に掲載いたします。

(日本ロシア文学会国際交流委員長 沼野充義)



「ロシア語週間2004」聴講記

小林 潔


 11月23日〜29日、ロシア科学文化国際協力センターと日本ユーラシア協会との共催で「ロシア語週間2004」が開催された。今回で2回目となる企画である。

 ロシアからの代表団としてコストマーロフ国際ロシア語ロシア文学教師連盟前会長(74 アカデミー会員、元プーシキン大学学長)、人民芸術家ワレーリー・セルゲーエフ氏(52)らが来日し、ロシア大使館(24日)や第14回全国ロシア語教育研究集会(27日於名古屋)、東京外国語大学(29日)で講演と実演を行った。日本ロシア文学会でも国際交流委員会と東京大学スラヴ文学研究室との共催で11月25日、東京大学文学部にて、コストマーロフ先生による講演「ロシア語の現状と発展の傾向」とセルゲーエフさんの詩の朗読と弾き語りが行われた。司会は佐藤純一先生(露文学会前会長)。

 コストマーロフ先生は、語結合法や語彙を例に言語変化について語られた。ロシア語は変化している、だがそれはロシア語内部にある法則に従って変化しているのであって、そこに「悲劇はない」、と断言された。但し、変化の速度には「危険性がある」、と先生も懸念されている。聴衆からは正書法改革や政治情勢と言語との関係について質問が出された。現代に於けるロシア語の地位はロシア側にとっても日本側にとっても共通の関心事項である。

 続くセルゲーエフさんによるエセーニンとオクジャワのギターでの弾き語りは聴衆にとって素敵な贈り物で、「ロシア語は我々の光であり、愛であり、誇りなのだ」という彼の持論を見事に証明していた。お二人の講師からはロシア語に対する情熱と絶対的な信頼、その響きに対する誇りが伝わってきた。

 ロシア語を取り巻く現在の日本の状況はロシア語・ロシア文学研究の意義を疑わせるほどであるが、今回、代表団の情熱に接して日本人がロシア語に取り組む意義をあらためて考える機会を得た。このような「ロシア語週間」の行事は現役のロシア語教師にはもちろん、未来ある院生・学部生にとっても意義あることで、企画に当たられた諸機関に感謝申し上げる。次年度以降の更なる盛り上がりを期して日本ロシア文学会とのより密接な連携をお願いしたい。

(こばやし きよし 早稲田大学非常勤講師)


写真:歓迎の辞を述べる佐藤教授(右)とコストマーロフ博士(中)、セルゲーエフ氏(左)

歓迎の辞を述べる佐藤教授(右)とコストマーロフ博士(中)、セルゲーエフ氏(左)


写真:ギターで弾き語りをする人民芸術家セルゲーエフ氏

ギターで弾き語りをする人民芸術家セルゲーエフ氏


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